PEST分析は、世の中の流れと自社への影響を整理する分析手法の一つで、事業戦略を考えるうえでもかなり序盤に活用するフレームワークです。
そこで今回は、このPEST分析について解説していきます。
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
PEST分析とは
PEST分析とは、マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラー氏によって提唱された、外部環境を整理するためのフレームワークです。
事業戦略を考える際や、本サイトのテーマでもあるブランディングを行う上でも、かなり序盤に使うのが通常です。
なぜ『PEST』分析なのかというと、政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)の4つの要素それぞれの頭文字をとって、PEST(ペスト)と名付けられたためです。
各要素についての説明は下記の通りです。
政治的要因(Political)
法律、裁判や判例、税制、政治、補助金などが該当します。
役割としては主に事業責任者やリーダーが把握しておくべき項目ですが、商材や担当によっては事業の現場メンバーも一部把握しておく必要があります。
美容系商材などは薬機法、マーケティング担当者はステマ規制などがあげられます。
経済的要因(Economic)
景気、物価、金利、消費者の所得、業界の動向などが該当します。
この要素はグローバル展開している会社であれば為替なども含み、ひとり社長として小規模でショップを運営している方であれば消費者の所得などがリストアップされるため、多くの場合はリスト項目が多数あがってきます。
2,3項目しかあがらなかった場合、本当に抜け漏れがないか再確認してみてください。
社会的要因(Social)
人口、世論や流行、宗教、ライフスタイル、自然環境などが該当します。
商品やサービスのターゲットになりそうなグループを漠然とでよいので想像して(むしろ現時点で明確なターゲットは定まっていないはずなので)、まずは上記項目の人口~自然環境について影響があるものを考えてみてください。
技術的要因(Technological)
技術開発の発展、特許、新素材の開発、代替技術、エネルギー供給の変化などが該当します。
消費者が直接受け取ることができる自社の技術的な項目だけでなく、業務自動化や競合他社の新技術なども記載します。
AIは、もはやどの業界でも入ってきそうですね。
PEST分析の重要性
そもそも、外部環境の分析って重要なの?
と思われるかもしれませんが、事業戦略を考えるうえでは重要な役割を持ちます。
社会全体の流れを把握できる
法改正や技術革新のような世の中の流れを、テーマに分けて整理することができます。
例えば、新型コロナウイルスが広がった頃に”Stay Home”や”おうち時間”と、家にいることを推奨する動きが出ましたが、このような世の中の流れをPEST分析でピックアップし、新型コロナウイルスの蔓延が自社にどのような影響を与えるかを整理することができます。
他の分析を補完できる
事業戦略を整理する際、3C分析やクロスSWOT分析など一般的に様々な環境分析のフレームワークが存在しますが、PEST分析を用いることで、ほかの分析を補完することができます。
特に、クロスSWOT分析では外的要因を機会と脅威に分けて考えますが、この時、あらかじめPEST分析を完了しておけば、網羅性の高いアウトプットが可能になります。
PEST分析のやり方
私が行うPEST分析のやり方をご紹介します。
政治的、経済的、社会的、技術的、これらの要素ごとに、自社に関係がありそうな項目を思いつく限り書き上げます。
このとき、関係ないものは後から削除するとして、あまり理解していない項目(法律や新技術などは特に)でも、ブレインストーミングのようにいったん記載するようにします。
まずは30分や1時間など、時間を決めて行うのがおすすめです。
Chat GPT(AI)に、関係しそうなPESTの各要素を、リスト化して洗い出してもらいます。新しい発見があれば追記します。
Chat GPTのおかげで、作業がかなりラクになりました。
書き上げた各項目が、それぞれ自社にとってプラスとマイナスどちらに影響しそうか(あるいは両方なのか)、どのような影響がありそうかを考えます。
私の場合、下記のようにフレームを追加して記載します。
時間をおいて、後日改めて表を眺めて、リストに抜け漏れがないかを確認します。
関係者に共有してフィードバックをもらい、必要があれば修正しつつ完成させ、同時に合意形成を行います。
PEST分析のポイント
PEST分析を行う上で、いくつかポイントをご紹介します。
まずは手を動かしてみる
PEST分析の内容は理解したものの、いざ項目をリストアップしようとすると、何も思いつかず書けない、ということがあるかもしれません。
私も最初は何にも書けませんでした汗
そんな時は、とりあえず手を動かしてみて、自社に関係あるかわからなくてもとにかく書いてみることをおすすめします。
新聞や業界誌、プレスリリースで情報を得る
PEST分析でなかなか難しいのが、どこから情報を得るか、です。
新聞や業界誌などを日頃からチェックしているのがベストですが、そうでない方はここで少し苦労すると思います。
そこで一つ、私のオススメとしては、PR TIMESなどで関連がありそうなプレスリリースを見ることです。
プレスリリースを広告のように扱う企業も多いですが、広報に力を入れている企業は社会性を考えていますので、プレスリリースで簡潔にその社会性を確認することができます。
競合や関連する企業のプレスリリースをいくつか見るだけで、業界的にどのような課題があるのか、世の中の流れがどのように動いているのかを把握することができます。
チームで考える
どれだけ調べてもわからない場合、チームメンバーで分担するのも一つです。
そもそも、PESTは各要素が独自性が強く、Pは法務部、Eは経営部、Sは営業部、Tは開発部、のように、会社内でも領域が分かれているかと思います。
そんな時は、もし可能なら上記のような部署の方々にも協力を仰ぎながら記入していくことで、より専門性と網羅性の高いリストが出来上がるでしょう。
メンバーにも「事業計画に関わった」という納得感が同時に醸成されますね。
時間を空ける
PEST分析に限らずですが、何時間かけてもなにも思いつかなかったことが、後日改めて考えるとウソのようにスラスラ出てくることがあります。
どんなに考えてもリストアップできないと思った時は、いったん煮詰まった頭を冷やすためにも、後日着手してみてください。
万能ではない
PEST分析はマクロ面で非常に有効な分析手法ですが、ミクロ面は弱いところがあります。
自社の強みや競合の弱みなどは、PEST分析の整理要素にはないですもんね。
PEST分析を使えるようになったからと言って過信せず、3C分析やクロスSWOT分析などのほかの分析と併用し、網羅性を高めるようにしましょう。
リストアップした項目の配置を気にし過ぎない
各要素の項目をリストアップしていると、「この項目はどっちの要因に入れたらいいんだろう?」と判断に迷う項目が出てきたりします。
そんな時は、結論、迷ったどちらかに入れておけば大丈夫です。
PEST分析の目的は自社に影響のある外部環境を整理することですので、MECE(もれなくダブりなく)さえできていれば問題ありません。
PEST分析以降にもたくさん整理しなければならないことがあるはずですので、細かい所は改めて見直す時間を確保するとも考えて、次に進むようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
繰り返しになりますが、PEST分析は外部環境を評価するために非常に便利で重要な分析フレームワークです。
日頃から業界の動向や業界誌を追っていないと、作業が進みづらく苦手意識を持ってしまうかもしれません。
ただ逆に言えば、PEST分析を網羅的に整理できるだけで大きく差がつきますので、ぜひおさえておいてください。