第6回目のブランディング解説事例は、学習を一人ひとりに最適化するAI先生「atama+」です。
“見える化”するレベルで徹底的にペルソナを具体化したatama+。
スタートアップ企業としての戦い方も功を奏し、見事な事業成長を遂げています。
今回、そんなatama+の誕生秘話を、ブランディング観点の解説をそえてご紹介したいと思います。
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
atama+の誕生秘話
AIで学習を一人ひとりに最適化
学校の授業は一般的に、生徒全員に対しておおよそ均等に行われます。しかし、生徒一人ひとりの得意箇所・苦手箇所は異なるため、効率の良い学習に疑問が残ります。
atama+は、そんな生徒一人ひとりの「得意」「苦手」といったデータを「アタマ先生」と名づけられたAIが分析する、「基礎学力を最短で身につける」ことを目的とした学習プロダクトです。
スタートアップ企業の戦い方
創業してまもなくの2017年4月、atama+を提供するatama plus株式会社では「最初の100人が熱狂するプロダクトを作ろう」というスローガンが、ポスターとしてオフィスの壁中に貼られていました。
この言葉には、経営資源が限られたスタートアップ企業が大企業に勝つために、万能的で多彩な機能を搭載したプロダクトではなく、まずは「100人が熱狂する」プロダクトを作ろう、という意味が込められていました。
ペルソナの具体化
そこで、atama+が重点を置いたのがペルソナ。
100人のユーザーとはどんな人なのか。”学習意欲の低いユーザー”なら、受験シーズンや夏休みなどどんな温度感で学習意欲が低いのか。
ペルソナの解像度はプロダクトの品質に直結すると考え、学力や家庭環境などの属性情報を具体化していきました。
またそれだけに収まらず、ペルソナの3Dフィギュアを作成し、オフィス内で常に視界に入る場所に設置するなど、徹底してメンバーのペルソナ認識を揃えることにしました。
プロダクトの提供を開始してからも、現場の機能ニーズやお困りごとは「ペルソナの熱狂につながるかどうか」を第一優先にしました。
5年間で大きな事業成長
そうして初期のatama+が生まれた結果、ペルソナが求める機能やニーズを満たした熱狂するプロダクトとして、当初スローガンとなっていた「最初の100人が熱狂するプロダクトを作ろう」を実現させることができました。
プロダクトがリリースされてから5年経った今では、atama+を使って生徒が勉強した総学習時間は累積1,000万時間を突破。
導入数もいまでは全国の3,500教室を超えるなど、さらなる事業拡大に成功しています。
(参考文献|PR TIMES atama plus株式会社 https://prtimes.jp/story/detail/Qqb2R0YU6bD)
ブランディング観点で解説
それではこのお話を、ブランディングのステップに沿って解説してみたいと思います。
「atama+のブランディングを行うなら」という観点でポイントを考えてみました。
ブランディングは、下図のように目的から目標設定まで上から順に行っていきます。
今回の事例のポイントは、
- ポイント①|環境分析(クロスSWOT分析)
- ポイント②|ペルソナ
です。
ブランディングのステップについて知りたい方は、先に下記記事をご覧ください。
ポイント①|環境分析(クロスSWOT分析)
クロスSWOT分析は、内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)を縦横に並べて掛け合わせたフレームワークのことです。
atama+は、スタートアップ企業としての自分たちの強みや弱み、外部環境を理解した上で、戦い方をコントロールしました。
メンバーは「~によって〇〇君(ペルソナ)の熱狂を作れる」が説明できないと、リソースは投下されないそうです。
ポイント②|ペルソナ
ペルソナとは、ターゲットとなる顧客の特徴や行動パターン、ニーズなどを具体的にイメージ化したものです。
atama+では、ペルソナの3Dフィギュアを作成するほどにはっきりと定義していました。社内では「ユーザー」という言葉は使わず、ペルソナの名前で議論しているそうです。
この徹底ぶりが、「特化型プロダクト」作りに大きく貢献しました。
ブランディングのステップでは、STP分析を行うことでこのような具体的なペルソナを作成することができます。
ちなみに、中学生向けプロダクトをリリースした際も、同様に下記のようにペルソナを定義しています。
まとめ
いかがでしたか?
事業戦略やマーケティングに携わっていると一律してペルソナの重要性を耳にするかと思いますが、ここまでペルソナを固めている会社もそうそうないのではないでしょうか。
これからペルソナを作ろうと考えている方、スタートアップ企業として事業を拡大させたい方、ぜひご参考ください。