第3回目のブランディング事例は、「ワンダモーニングショット」です。
2002年、すでにレッドオーシャン化していた缶コーヒー市場で、業界5位だったワンダ。
そこからどのような逆転劇を繰り広げてきたのか、ブランディング視点で解説してみました。
競合と差別化を図り市場シェアを広げたいとお考えの方、ぜひご覧ください。
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
ワンダモーニングショットの誕生秘話
激戦の缶コーヒー業界
清涼飲料市場の約2割を占める缶コーヒー業界。
1997年に立ち上がったワンダは当時、プロゴルファーのタイガー・ウッズ選手を起用するなどして話題を呼び、缶コーヒーブランドとして5位に位置していました。
しかし、競合も負けてはいませんでした。
1999年には「ファイア」、2000年には「ルーツ」など、続々と新しいブランドが誕生し、缶コーヒー業界のトップの座を競い合っていました。
そのような背景から、ワンダはさらなるシェア拡大について伸び悩んでいました。
ニーズの深堀り
2001年当時、多くの缶コーヒーブランドが味や製法、豆の種類などを訴求していました。
「〇〇産高級豆をブレンド!」といった表現は今でもよく耳にしますね。
そこでワンダは、コーヒーの価値を見直すところから始めることに。
徹底的に調査した結果、午前中に缶コーヒーを飲む人が約40%で、缶コーヒーに求めるものは「朝の眠気覚まし」「始業前に気合を入れる」という人が多いことがわかりました。
差別化戦略
「時間×飲み物」といえば”午後の紅茶”が思い浮かびますが、朝で差別化を図っている競合はいませんでした。
そこでワンダは、自ら市場を絞るという不安はあったものの、上位ブランドを追いかける者の立場を受け入れて、チャレンジすることにしました。
その後、「朝」にふさわしく、かつときどきではない毎朝飲まれる缶コーヒーを目指して研究開発を重ね、2002年10月にワンダモーニングショットの発売に至りました。
ブランドの成長
発売後のプロモーションにおいても、駅前やガソリンスタンドなどでサンプリングを行ったり、ビジネスマンとして所ジョージさんや仲間由紀恵さんを起用するなど、「朝」をテーマに一貫性を持たせました。
ワンダを展開するアサヒ飲料の社長自ら、当時のサンプリング配布に参加したそうです。
全社的な尽力の甲斐もあり、ワンダモーニングショットは発売当初から瞬く間に人気の缶コーヒーとなりました。
そしてご存じのように、ワンダモーニングショットは20年経った今でもまったく同じコンセプトで販売し続けています。
いまではシリーズ全体で缶コーヒーブランド3位にまであがっており、当初の目的だったシェア拡大も成功することができました。
ブランディング観点で解説
それではこのお話を、ブランディングのステップに沿って解説してみたいと思います。
「ワンダモーニングショットのブランディングを行うなら」という観点でポイントを考えてみました。
ブランディングのステップについて知りたい方は、先に下記記事をご覧ください。
ポイント①|環境分析(3C分析)
ワンダはお客さまがコーヒーに求めるものを徹底的に調査し、「朝の眠気覚まし」「始業前に気合を入れる」を見つけました。そして、競合が訴求していない”朝(時間)”に市場機会を見出しました。
市場(ニーズや不満)
- おいしいコーヒーが飲みたい!
- 眠気覚ましに飲みたい!
- 始業前に気合を入れたい!
自社(強みや弱み)
- 市場ニーズにあわせて企画が可能な商品開発力!
- 業界上位を目指すチャレンジ精神!
- 業界5位の権威性
競合(強みや弱み)
- 〇〇産厳選豆を使用!といった産地ブランドや希少性の訴求
- 独自の〇〇製法!といった技術力の訴求
- 業界上位の権威性!
- 業界全体の訴求被り
なお、3C分析について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
ポイント②|STP分析
市場を「豆」や「製法」ではなく「時間」と切り、競合のいないブルーオーシャンを見つけることができました。
ポイント③|ブランド要素
環境分析で見つけた「朝×コーヒー」という市場機会を、ブランド名やタグラインまできれいに落とし込んでいます。
朝”専用”やモーニング”ショット”という言葉が、朝をさらに引き立てていますね。
まとめ
いかがでしたか?
今回ワンダモーニングショットのお話は、非常にわかりやすい形で市場を切り、競合との差別化を図ることに成功した例になります。
ただそれだけではなく、”朝”をテーマにした商品開発やブランド要素、プロモーションすべてに一貫性を持たせたことも非常に重要なポイントかと思います。
自社の事業シェアの拡大に悩んでいましたら、小手先のマーケティング施策のみでカバーしようとせず、上流から一貫性を持った設計を検討してみてくださいね。
そうすることで、ワンダモーニングショットのように、息の長い強力なブランドを作り出すことができるかもしれません。