この記事では、ブランディングのやり方をステップに分けてご紹介します。
「そもそもブランディングとは」という方は、この記事を読む前に下記記事を読んで頂くことをおすすめします。
ブランディングとは?現役ブランドマネージャーが解説!|ロジブラ
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
ブランディングのやり方
それでは早速、ブランディングのやり方をご紹介します。
なお、この整理の仕方はブランドマネージャー認定協会のやり方を参考にしたものですので、もっと深く知りたいという方は、同協会のHPもチェックしてみてください。
全体の流れ
まずは砂時計を頭に思い浮かべながら、下図をご覧ください。
このとき、上から下に砂が落ちていくように、最も面が広い上から着手していきます。ざっくり、
- 広いところから環境分析を行い、勝負しないポイントを削っていく
- 自社が最も輝く個性(ブランドアイデンティティ)を見つける
- 広げ方を考える
という流れ、とお考えください。
そして、これをさらに具体化すると計8つ(前提整理含めると9つ)のステップに分けられます。
STEP0. 前提整理(背景、目的、市場戦略)
まず、そもそもなぜブランディングを行うのか、ブランディングを通じて何をしたいのかを整理します。あまりいい格好をしようとせず、売上を伸ばしたい!など、素直に整理しましょう。
市場戦略は、アンゾフの成長マトリクスというフレームワークを使用します。新しい製品を作るのかor既存製品でいくのか、市場は新しい領域に攻めるのかor既存市場でシェアを広げるのか、といった感じで、どの市場戦略にするかを定義します。
最序盤で市場戦略を定義しておくことで、後々議論が混乱したときに立ち戻りやすくなります。
STEP1. 環境分析(PEST分析、3C分析、クロスSWOT分析)
前提整理が終わったら、次は環境分析です。
環境分析は、世の中の大きな流れを把握するPEST分析、自社や周辺環境を整理する3C分析、それらを補完しながら別角度で市場機会を見つけるためのクロスSWOT分析、この3つを用います。
ここは詳しく説明すると際限がなくなってしまうので、また改めてそれぞれの分析についての記事を書きますが、ここでの環境分析で市場機会を見つけます。
STEP2. STP分析(セグメンテーション、ターゲティング)
次に、STP分析におけるセグメンテーション、ターゲティングを行います。
このステップは、ペルソナを作成するための準備フェーズ、と考えるとわかりやすいでしょう。
上の表は基本セグメントの項目例で、実際は他にも固有セグメントという項目を定めていきます。
年齢や性別、エリア、趣味趣向など、どのような属性を持つターゲットを狙うかを考えます。ここで定めた要素からペルソナを作成していきます。
STEP3. ペルソナ、連想マップ
STEP2で定めた要素を矛盾なく組み合わせてペルソナを作ります。
1点、「だいたいこんな人じゃないか」という先入観でペルソナを作らないように、注意しましょう。
STEP2で定義していなかった、あるいは矛盾のある要素が突然出てきて、それをペルソナのストーリーに組み込んでしまうと、市場機会から一貫性がなくなったり、チームメンバーからの納得感が得られなくなってしまいますので、気をつけてください。
連想マップは、市場機会に関連するキーワードに対して、ペルソナがどのようなことを考えるかを連想して作成していきます。このとき、自身がペルソナになりきったつもりで、あまり深く考えずに思いつくまま書き上げるのがコツです。
STEP4. ポジショニングマップ
次に、STEP2のSTP分析で置いてけぼりにしていた、ポジショニングマップの作成です。
前工程の連想マップで出た項目をヒントに、ペルソナ目線で自社と競合のサービスの差をポジショニングマップに落とし込みます。
ポジショニングマップには、「機能的価値」「情緒的価値」「購買手段」など、様々な観点での落とし込み方がありますが、あればあるだけ良いので、いくつも作ってみるのが良いでしょう。また、基本的にいずれも自社と競合で”距離”が生まれる軸を選定するのがベターです。
STEP5. ブランドアイデンティティ
先ほどお見せした砂時計のくびれの部分で、あなたの商品やサービスの”輝き”を簡潔に表現するのがこのステップ「ブランドアイデンティティ」です。
これまでの情報を整理して一つの文章や言葉にまとめ、その文章や言葉(ブランドアイデンティティ)=あなたの商品やサービス、となるように考えます。
この時、よくかっこいい言葉でまとめようとする方が多いのですが、ブランドアイデンティティは主に社内やチームのブランドに対する理解を統一させるものなので、キャッチーな言葉である必要はありません。キャッチコピーは後ほどブランド要素を決めるタイミングで考えますので、ご安心ください。
また、ブランドアイデンティティが決まったら、その表現がこれまで整理した市場機会やペルソナ、ポジショニングマップなどと矛盾がないか、振り返ってみるとよいでしょう。
STEP6. ブランドプロミス、ブランドパーソナリティ、4P/4C分析
このステップからは、砂時計の下半身にあたる部分、どのように尖らせた魅力(ブランドアイデンティティ)を広げるかを考えていきます。
ブランドプロミスは「私たちは〇〇を約束します」「△△をしません」のような、消費者に対する宣言です。それを破ったらブランド(一貫性)が崩れる、と置き換えて考えてみるとよいでしょう。
ブランドパーソナリティは、ブランドを”擬人化”させるとどのような人になるか、を定めます。必須で定義すべき項目ではありませんが、消費者や顧客とのコミュニケーションをどの担当者でも統一感をもたせたいという方は、ここで定義しておくと便利です。
4P/4C分析は、別名”マーケティングミックス”とも呼ばれ、企業目線と消費者目線で「商品」「場所」「価格」「販売促進」について整理をします。
STEP7. ブランド要素、ブランド体験、推奨規定/禁止規定
ブランド要素は、商品名やロゴ、ドメインやタグライン(キャッチコピー)など、ブランドを形成する最小単位のものを指します。前ステップまでで定めた内容と一貫性が現れるように設定をします。
ブランド体験は、認知~購入~リピートといった一連の”体験”を考える工程で、いわばマーケティング戦略を決める工程です。予算や獲得効率は細かく決める必要はなく、カスタマージャーニーのみを作り上げます。
推奨規定/禁止規定は、前ステップで定めた4P/4C分析と並べながら、なにをしてよいか(すべきか)、逆に何をしてはいけないか、といったことを記載します。
例えば、項目の一つにPrice(価格)がありますね。この時、推奨規定に「セット買いには割引率を高める」、禁止規定に「商品価値の向上がない状態での値上げ」、といったイメージです。
STEP8. 目標設定
最後のステップ、目標設定です。
目標設定は、内部(インターナル)と外部(エクスターナル)、定量と定性、これらをそれぞれ組み合わせた計4つの観点で設定をします。
この時、スケジュールを含めて決めることで、より具体的なブランディングの目標設定が可能になります。
まとめ
ブランディングのやり方について、イメージできましたでしょうか?
ちなみに、この工程を見える化し、一つの資料に束ねたものをブランドステートメントと言います。ブランドステートメントを作成してチーム内で共有することで、自社事業のブランディング方針が統一されますので、ぜひ作成してみてください。
もしご質問やご不明点があれば、お気軽にお問合せください。