近年、様々な分野でブランディングが重要視されるようになりました。
一方で、
「ブランディングは抽象的でよくわからない、、」
と感じている方も多くいらっしゃるかと思います。
そこで今日は、ブランディングについてお話いたします。
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
ブランディングの定義
ブランドマネージャー認定協会では、ブランディングとは、
ブランド・アイデンティティとブランド・イメージを一致させる活動のこと。
(出典元:ブランドマネージャー認定協会 公式HP|https://www.brand-mgr.org/knowledge/word/)
と定義しています。
これをもう少しかみ砕くと、
「企業側の“こう思われたい”と、消費者側の”こう思っている”を、一致させ続ける活動」
といえます。
例をつかってお話をしましょう。
例えば、あなたがとあるお菓子ブランドの責任者だとします。あなたは、自社のお菓子について、
「甘くておいしい」「毎日食べたくなる」「見た目がかわいい」
と思ってもらいたいと考えています。一方、消費者はそのお菓子に対して
「甘くておいしい」「ご褒美の日だけ食べるお菓子」「見た目がかわいい」
と思っているとします。
この時、ブランディング観点でいえば「甘くておいしい」「見た目がかわいい」は一致しているのでブランディングができているものの、「毎日食べたくなる」とは思われていないため、この点はブランディングができていないと言えます。
つまり、今後は「甘くておいしい」「見た目がかわいい」の印象は維持しつつ、どのように「毎日食べたくなる」と思って頂くか、これを考えて取り組んでいくことがブランディングです。
イメージつきましたでしょうか?
ブランディングの重要性
そんなブランディングですが、なぜ重要視されているのでしょうか?
これにはいくつかの理由が挙げられます。
価格競争から抜け出せる
自社の商品やサービスについてもっとも強いポイントを打ち出し、消費者から好意的に受け止めてもらうことができれば、価格が多少高くても選ばれる可能性が高まります。
先ほどのお菓子の例でいえば、「甘くておいしいお菓子といえば〇〇(←あなたの商品)!」と消費者に思って頂けている場合、その消費者が「甘いお菓子が食べたい!」と思った時、真っ先にあなたの商品を思い浮かべることでしょう。
この時、すでにあなたのお菓子を食べたい”スイッチ”が入った消費者の気分は、ちょっとした金額差では揺るがず、そのまま買ってくれる可能性が非常に高いでしょう。
営業やマーケティング活動が効率化できる
ブランディングは、営業やマーケティングのような販促活動においても効果を発揮します。
「甘いお菓子が食べたい!」という消費者ニーズが発生したとき、ブランディングができていると、ニーズが発生した直後に自社は競合と比べて最も優位なポジションにいます。
逆にブランディングができていなければ、その消費者に振り向いてもらえるよう、販促活動が必要になり、人や予算を費やすことになります。
つまり、ブランディングができていることで「売り込まなくても売れる」状態につながり、販促活動が効率化していきます。
信頼できるビジネスパートナーを増やせる
ブランディングであなたの理念がくっきりし、行動や結果につながっていると、それに共感した方が「自分も力になりたい!」と集まってきます。これは、ビジネスパートナーや採用活動など、社内外問わず言えることです。
そのような思いで集まってくれた方々は、今後事業で多少苦戦を強いることがあっても、一緒に乗り越えようと頑張ってくれることでしょう。
ブランディングのやり方
ここではブランドマネージャー認定協会で学ぶ、戦略志向なやり方を簡単にご紹介します。
下図を、砂時計をイメージしながらご覧ください。
このとき、上から下に砂が落ちていくように、最も面が広い上から着手します。大きくは下記1~3の流れです。
- 広いところから環境分析を行い、勝負しないポイントを徐々に削っていく
- 自社が最も輝く個性(ブランドアイデンティティ)を見つける
- 広げ方を考える
もう少し具体化すると計8つ(前提整理含めると9つ)のステップがあり、詳細は下記記事で解説しています。
ブランディングの成功事例
ブランディングの成功事例をいくつかご紹介しましょう。
スターバックス
まずはブランディング的にも有名なスターバックスから。
「サードプレイス(第三の場所)」をブランドアイデンティティとし、自宅や職場ではない”第三の居場所”を目指しました。その軸を中心に、木目調の空間や暖色系の照明、ゆったりとしたソファを置くなど、一貫性を保っています。
競合は回転率を意識してカウンターテーブルなどを配置する一方、スターバックスはカフェでゆっくり過ごしたいと思う顧客を取り込むことに見事成功しています。
ワンダモーニングショット
2002年、当時の缶コーヒー業界はすでにレッドオーシャンで、各社豆の種類や製法で少しでも優位性を築こうと奮闘していました。
そんななか、同年に発売開始したワンダモーニングショットは、唯一「時間」に独自性を見出し、競合との大きな差別化と事業拡大に成功しました。
また、商品名やタグライン(キャッチコピー)には”モーニング”や”朝専用”というキーワードを含ませたり、テレビCMでもターゲットのビジネスマンに刺さるよう、キャスティングやシーンにも統一感を持たせています。
この事例は下記で簡単に解説していますので、こちらもご覧ください。
tonton
最後に、大手企業とは志向を変えた事例です。
tontonは、石川県にあるアレルギー対応パンを販売するパン屋さんです。
もともとは地元のこじんまりとしたおいしいパン屋さんを目指していましたが、なかなか売れず、ただとあるお客様のお声をきっかけに、アレルギー対応専門のパン屋さんにシフトしました。
結果、全国のアレルギーに悩むお客様から注文やうれしいお声が届くようになり、”アレルギー対応パンを販売するパン屋”としての地位を確立しました。
こちらも下記で解説していますので、よろしければご覧ください。
ブランディングの注意点
一方、実際にブランディングをするうえで、いくつか注意しなければならないことがあります。
表向きだけ整える
「ブランディングはよくわからないから…」と言って深掘りせず、デザインや表現など表向きだけ整えようとするのはNGです。
そのようなアウトプットは消費者にどことなく”やっつけ感”と感じ取られたり、細かいところで矛盾が生まれたりしますので、ブランド全体へのマイナスイメージにもつながりかねません。
自分たちの想いを商品(サービス)やターゲット、ブランドアイデンティティに一貫性を持たせながら落とし込むため、上流から考えるようにしましょう。
思い込みばかりで判断する
仮説のもと進めていくことは必要ですが、だからと言って思い込みばかりで進めていくのは非常に危険です。
特に、自社の商品やサービスの強みに対しては、顧客からの評価などを都合の良い方向で考えてしまいがちで、自己満足のブランディングになってしまう恐れもあります。
顧客インタビューやアンケートなどで、リアルで客観的な評価を取るようにしましょう。
チームの理解がバラバラである
自分ひとりで「この商品は〇〇だ!」と定め、顧客からもそのような回答が得られても、チームの理解がバラバラでは非常に危険です。
ブランディングは、広告やSNSの担当者がやるものと思われがちですが、そうではありません。商品やサービスの体験中や前後、ロゴやカスタマーサポートなど、顧客が目にしたり体験したりするものすべてがブランドの評価につながります。
つまり、誰かが自社のブランディングに反する些細なコミュニケーションを顧客と行っただけで、その顧客からの印象は変わります。
定期的にメンバーのブランディングの理解を確認する、ブランドパーソナリティになりきって消費者とコミュニケーションを図ってもらうなど、統一感を持たせるようにしましょう。
一度整えたら終わりと考える
ブランディングは、認識を一致し”続ける”活動です。
作ったら終わりではなく、定期的にメンテナンスしていく必要があります。
あなたの事業がうまくいけばいくほど、競合もあなたのやり方をマネしようとしてくるため、いつの間にか自社の類似品だらけになっていた、となる可能性も大いにあります。
ブランドステートメントなどを作成し、1年に1回でもよいので、定期的に更新していくようにしましょう。
まとめ
ブランディングについて、理解は深まりましたでしょうか?
改めてになりますが、ブランディングとは「企業側の“こう思われたい”と、消費者側の”こう思っている”を、一致させ続ける活動」です。
そしてブランディングは、大企業だけのものではなく、中小企業や個人でも効果を発揮してくれるため、誰でも好きなことを発信できる今の時代に非常に有効な考え方だと思います。
ぜひ、ブランディングの理解を深めて、事業成長にお役立てください。