連想マップ(マインドマップ)は、新しいアイデアを発見したり、思考を整理するための手法として、様々な場面で使われています。ブランディングのステップにおいても、ペルソナが連想しそうなワードを洗い出し、ポジショニングマップの軸のヒントにするうえで重要な役割をもちます。
そこで今回は、連想マップの意味や重要性をわかりやすく解説するとともに、あまり他では見られないおすすめの使い方をご紹介します。
<プロフィール>
RyS ("リス"と読みます)
〇ブランドマネージャー1級資格取得
〇一般財団法人ブランドマネージャー認定協会公式アンバサダー
〇toB,toC問わず、中小企業を中心にブランディング支援活動中
連想マップとは
連想マップ(マインドマップ)とは、とあるテーマに対し、関連するさまざまなアイデアやキーワードを枝分かれさせて視覚的に表現する手法です。
実物を見ていただいた方が早いので、下図をご覧ください。
こちらは、『ブランディング』をテーマに作成した連想マップです。
実際に活用するときは、もうふた回り以上の大きさになるボリュームで作成します。今回はイメージ用にコンパクトにしています。
中央のブランディングを中心に”枝”が発生し、関連するワードが周囲に並んでいますね。『ブランディングといえば、〇〇』、右隣も『差別化といえば、△△』という状態になっているかと思います。
このように、頭の中で散らかっているアイデアやキーワードを整理しつつ、その内容をチーム内に視覚的に共有できる手法、これが連想マップです。
連想マップの重要性
連想マップの重要性について、メリットとあわせてご紹介します。
思考を整理できる
先ほどお話したように、連想マップは思考を整理するのに非常に便利です。
頭のなかだけでアイデアを整理しようとすると、すぐにキャパオーバーになったり、せっかくの貴重なアイデアを忘れてしまう可能性も大いにあります。
連想マップは、そのような混乱を避けるために非常に便利です。
競合との差別化ポイントのヒントを発見できる
連想マップで出てきたキーワードは、競合との差別化ポイントのヒントになります。
例えば、先ほどお見せしたブランディングの連想マップは、本サイトのペルソナが連想している一部なのですが、中央の左隣に『デザイン』とありました。これはペルソナが「ブランディングといえば、デザイン」と連想することを表しており、また実際に、多くの競合がブランディングをデザイン観点で語っていることも確認しています。
ここに本サイトの差別化ポイントがあります。
本サイトは、「ブランディングはデザインの話で、抽象的な話が苦手で馴染みのない自分には難しい」と考えているペルソナに、ロジカルに整理できることを伝えたいと思っています。
つまり、連想ワードのデザインが、顧客のニーズを満たし、競合との差別化を図るためのヒントとなっています。
のちほどご紹介しますが、ポジショニングマップの軸として活用すると、こちらも視覚化できてわかりやすくなります。
アイデアを発掘できる
連想マップは視覚化できるため、ワークなどを通じてチームで活用することができます。
そして、自分のアイデアを出し切ったと思ったら別のメンバーにバトンタッチして、新しいアイデアを見つけることが可能になります。
連想マップの作り方
次に、連想マップの作り方をご紹介します。実際に、ペルソナになりきって連想して、作ってみてください。
スムーズにアイデアを出していけるよう、紙とペンを用意して、手書きでされることをオススメします。
まず、中央に配置するテーマを決めます。テーマを決めたら、下図の『AAA』に該当する赤枠内に記入します。
このとき、自社商品をそのままテーマにするのではなく、商品のカテゴリやペルソナの悩みをヒントに決めるとよいでしょう。
例えばイチゴのショートケーキなら『ケーキ』『ダイエット』など、化粧水なら『スキンケア』『肌荒れ』などです。
この決め方をすることで、ペルソナが何をどのように考えるのか、客観的で自然な連想マップの完成に近づけることができます。
テーマが決まったら、あとはひたすら連想していき、記入していきます。下図の『BBB』~『DDD』で緑の枠線内の領域です。
“枝”の生え方は、上図の例は気にせず、お好きなように作成してください。
連想するコツは、「〇〇といえば、△△」と、頭の中で自問自答していくことです。
むかし流行した、マジカルバナナというゲームみたいですね。
とにかく手を動かすことを優先して、時間をかけず記入していきましょう。
連想ワードを書ききったら、可能であれば別の人にもお願いして、追加で連想ワードを出してもらいましょう。
自分ひとりではどうしても限界があったり、ペルソナになり切れておらず無意識にワードが限定されている可能性があります。
誰かに協力してもらい、網羅性を高めましょう。
以上が連想マップの作成手順です。
ちなみに、ブランディングのステップでは、3個ほど連想マップを作成します。余力がある人は、ぜひ複数作成してみてください。
連想マップの使い方
連想マップは、無事作れましたでしょうか?
それでは今度は、その使い方についてお話します。
テーマ(中央)に近い要素をピックアップする
中央のテーマに近い要素は、ほぼ直接的に連想されているため、ペルソナ心理に響きやすい要素と考えられます。
その領域で活かせそうな特徴を見落とさないよう、ピックアップしておきましょう。
“枝”がたくさん生えている要素をピックアップする
とある要素から”枝”(=関連するワード)がたくさん生えていれば、その要素は重要度が非常に高くなります。
たとえば、連想ワードが一つしかない要素を狙った場合、中央テーマとの親和性や他要素への貢献度が低く、
まぁそれぐらいの違いならいっか、、
と、消費者顧客に思われてしまいます。
一方、枝がたくさん生えている要素に強みや差別化ポイントがあった場合、
私が求めてる役割をたくさんカバーしてくれる商品ね!
と、期待していただくことができます。
枝がたくさん生えている要素を俯瞰して探し、おさえておきましょう。
ポジショニングマップの軸に使う
ブランディングのステップでは、連想マップを作成したあとにポジショニングマップを作ります。
そのとき、この連想マップで出てきた要素を競合との差別化ポイント、つまりポジショニングマップの軸として使うことができます。
例えば下図は、本サイトのポジショニングマップの一部で、左側のマップで『デザイン』や『抽象的』を対抗軸においています。
対抗軸は否定的なものではなく、「別の領域で特化しているもの」を記載すると、恣意的な印象がなくなるのでオススメです。
冒頭でご紹介した連想マップでは、『デザイン』が直接の連想ワードとして出ていたので、上図のように軸として活用しました。
このように、連想マップで出てきた要素は、ポジショニングマップの軸のヒントとして活用が可能です。
連想マップのコツ
それでは最後に、連想マップの作り方や使い方について、いくつかコツをご紹介します。
web検索は参考程度に
WEBマーケティングに通じている方は、
自分で考えなくても、サジェストキーワードや共起語を調べればよいのでは?
と思うかもしれません。もちろんNGではないのですが、抽出結果のみで作成するのは危険です。
というのも、例えば「ブランディング」で検索すると、『ブランディング 事例』『ブランディング 意味』といったサジェストキーワード(関連する検索キーワードの候補)が出てきます。
しかしそれらは、「ブランディングといえば、△△」の”△△”に当てはまりづらく、連想マップのキーワードとしてはイマイチです。
また、サジェストキーワードや共起語はペルソナではない方の検索意図も含まれているため、その観点でも不適切となってしまいます。
あくまでペルソナ(になりきった自分)の連想ワードに抜け漏れがなさそうか、という観点で、補足情報として活用するようにしましょう。
真ん中を隠す
これはぜひ一度試していただきたい方法で、連想マップが完成したら、中央のテーマを隠してみてください。
周囲の連想ワードで、もともと入れていたテーマだけが思い浮かびますでしょうか?
もしそのほかのキーワードが思い浮かんだら、まだ連想が足りていない可能性があります。思い浮かんだその他のキーワードとどのような点が違うかを意識して、再びアイデア出しのフェーズに戻りましょう。
対義語にして”意外性”を狙う
これはブランディングのステップにおいては”邪道”とも考えられる使い方なのですが、新規事業のアイデア出しなどには便利なのでご紹介します。
その方法とは、連想ワードを出し切ったあとに、各アイデアの対義語を思い浮かべてみてください。
例えば、『ケーキ』が中央にあった場合、『甘い』『太る』『ご褒美』『記念日』などが連想キーワードとしてあがったとします。
このとき、周囲の連想キーワードの対義語や否定形を考えてみてください。『甘くない』『太らない』『お叱り、気合い(をいれる)』『日常』などでしょうか。
そして今度は、これらの対義語をテーマと掛け合わせてみてください。『甘くないケーキ』『太らないケーキ』『気合いを入れるケーキ』『日常で食べるケーキ』となりますね。
もうお分かりかと思いますが、こうすることで「おっ?」と思えるような、意外性のある商品やサービスのアイデアが生まれます。
意外性だけでは、ブームが過ぎれば飽きられてしまいますが、そこにニーズがあれば継続性のある事業となる可能性があります。
ブランディングのステップでは論理性が崩れるためあまり使えませんが、新規事業でなにから考えたらよいかわからない、という方は、ぜひブレーンストーミング手法の一つとして活用してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
連想マップは、思考の整理やアイデアの創出に非常に便利なツールです。
使い方も非常に簡単ですので、現場でもぜひ活用してみてくださいね。